昔ばなし絵巻

きつねのかんちがい

「きつねのかんちがい」について

きつねのかんちがい

きつねのかんちがいは、奈良県橿原市地黄に残る伝説を元にした物語です。主人公の惣五郎という男が、農作業の帰り道にケガをした仔ギツネを見つけます。惣五郎は手当てするために仔ギツネを自宅へ連れ帰りますが、それを見た親ギツネは惣五郎が仔ギツネを殺したのだと勘違いして、惣五郎の大切な田んぼを荒らしてしまうのです。

昔ばなしに登場するキツネといえば、イタズラをしたり化かしたり、しばしば人々を困らせるものですが、この物語に登場するキツネからは、仔ギツネを大切に思う優しさや、自らの過ちを認めて謝罪をするという正直さが見られます。

世界各地にキツネを精霊や妖怪とみなす民族は多く存在しますが、文化と言えるほどキツネに対して親密な国は日本の他にはあまり見られません。日本人にとってのキツネとは 人に害をもたらす存在でもあり、人に富をもたらす稲荷神の使いという存在でもあります。日本民話には「キツネの嫁入り」「しっぽの釣り」など、キツネが登場する民話は数多くありますが、大切な教訓をもつ本作品をシリーズに採用いたしました。

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保護者のみなさまへ

きつねのかんちがいは、「間違ってしまった時に素直に謝る心」や「誰かに謝られた時にその相手を許す心」という大切な教訓を含んでいます。この民話は『三段御作』などの題名でも知られており、その多くにおいて仔ギツネは古井戸で溺れて死んでしまっています。しかし本作品では、最後にキツネたちが感謝と謝罪を述べる場面を加えることで「誤解が解けた時の喜び」を強調し、教訓をさらに感じ取りやすくしたいと考え、現地の取材を通じて伺った話や意見も参考に、仔ギツネはケガをして倒れているという構成にいたしました。

私たちの暮らしの中には「勘違い」や「誤解」によって誰かを傷つけてしまったり、反対に傷つけられてしまったりすることが多くあります。この民話に触れたお子さまが、いつかそのような状況に立たされた時、その原因をしっかりと考えて、自発的に行動できるように成長して欲しいという願いを込めて編集いたしました。

きつねのかんちがい 豆知識

キツネと怪異

「きつねのかんちがい」の作品に登場するキツネは、謝罪する誠実さを持つ心優しいキツネですが、日本の民話や伝説には恐ろしいキツネや、キツネにまつわる怪異現象なども登場します。

九尾の狐と殺生石

きつねのかんちがい豆知識1

日本で最も有名な悪狐といえば、「白面金毛九尾狐」が挙げられます。 その美貌と博識から鳥羽上皇(位1107-1123)に寵愛され「玉藻前」と呼ばれましたが、彼女を側に置いてから鳥羽上皇は病に伏せるようになりました。医師にも原因が分からず人々が困惑していたところ、陰陽師によってその正体を見抜かれて、玉藻前は白面金毛九尾の狐の姿を現して行方をくらませました。

その後、那須野で発見されると、鳥羽上皇によって数万にのぼる討伐軍が編成され、三浦介や千葉介によって討伐されました。息絶えた九尾の狐は毒石となり、周囲に近づく人間や動物の命を奪ったために「殺生石」と呼ばれるようになりますが、後世の高僧によって鎮められたといわれています。この殺生石は今でも栃木県那須町に残されています。

狐火(狐提灯)

火の気のないはずの場所で見られる怪火で、山中や街中など様々な場所に現れます。その火を見た人を道に迷わせたり、反対に正しい道に案内してくれたりすると言われています。また、吉凶の前兆ともされていますが、狐火の後に起こるのが吉事なのか凶事なのかは地域ごとに異なります。各地で様々な言い伝えが残されていますが、東京北区にある王子稲荷の狐火はとても有名で、毎年大晦日になると関東一円のキツネたちが正装して集まり、その際には狐火が行列になって見られたと伝えられています。

狐火とオーロラ

きつねのかんちがい豆知識2

日本で「狐火」といえば、上記のような怪火をはじめとした妖怪や怪異現象が想像されますが、北欧のフィンランドでは「狐火」といえばオーロラのことを表します。

フィンランド語でオーロラは「revontulet(レヴォントゥレット)」と言います。この言葉はフィンランドの先住民族であるサーミの伝説に由来した言葉であり、そのまま「狐火」を意味しています。サーミの伝説では、キツネがツンドラの雪原を走る時に尻尾が雪に触れて火花となり、それが大空へ舞い上がってオーロラになるといわれているのです。また、魔法を表す言葉としても古代フィンランドでは「狐火」が用いられていました。

オーロラは紀元前から古文書や伝承に残されており、古代ギリシアの高名な哲学者であるアリストテレスは、その著書『気象論』において「天の割れ目」と表現されています。その他、音のしない雷の光であるとか、吉凶変事の前兆であるともされていました。

キツネと深い関わりを持ってきた日本とフィンランドですが、それぞれの文化において同じ言葉がまったく違う事象を意味しているのが興味深いです。

参考文献
綜合日本民俗語彙/大藤時彦他 平凡社
オーロラ その謎と魅力/赤祖父俊一 岩波書店
日本大百科全書/根本順吉他 小学館

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