昔ばなし絵巻

ねずみのよめいり

「ねずみのよめいり」について

ねずみのよめいり

ねずみのよめいりは、お父さんネズミが「よりいっそう強い者・偉い者」を娘の婿に迎えようと探し回りますが、結局はネズミをお婿にするという物語です。

このテーマは古代のギリシアやインドをはじめ、世界中で愛されてきました。日本でも鎌倉時代の『沙石集』に同型の話が見られ、昔ばなしとしても全国各地で語られてきました。この物語の他にも日本ではネズミを擬人化して主人公にした作品が数多く見られます。中でも『鼠草子』は「異種族との結婚」をテーマに描いているため、ねずみのよめいりの教訓を照らし合わせながら読むことができます。海外では、インドの『聖人の娘の結婚』や、中国の『猫の名前』が同型の話として挙げられます。

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保護者のみなさまへ

ねずみのよめいりの物語からは、数多くの教訓や戒めを読み取ることができます。「短所よりも長所を探した方が良い結果を生むこと」、「他の人に多くの事を求めすぎないこと」、「身近な人や自分のことを理解すること」、「相手からの提案を一度受け入れてから自分の考えを伝えること」など、その多くは社会における人間関係の構築に役立つ大切な心構えです。この物語が古今東西を問わずに世界中で愛されてきた理由のひとつは、この点にあると言えるのではないでしょうか。

このように多くの教訓性を持つ物語ではありますが、小さなお子さまにはまず、太陽、雲、風という日常にある自然や、仲良しの友だち同士が結婚するという話に親しみを覚えて欲しいと思います。その上で、読み聞かせを繰り返しながら、ゆっくりと教訓を伝えていただければ幸いです。

ねずみのよめいり 豆知識

イソップ寓話に見られる類話

『ねずみのよめいり』の類話は世界中に見られますが、その中でも紀元前のギリシアで成立した「イソップ寓話」には、同様の教訓性を含み、且つねずみが登場する物語が多く収録されています。ここではその中から3話ほどをご紹介します。

町ねずみと田舎ねずみ

昔、都会で暮らす町ねずみが、親戚の田舎ねずみを訪ねました。

田舎ねずみは喜んで小麦の茎やドングリなど、できる限りのもてなしをしましたが、それを見た町ねずみは「町へ来ればこんな粗末なものじゃなく、もっと美味しいものが食べられる」と言って、田舎ねずみを町へと連れていきました。

町ねずみが暮らす豪邸に着くと、テーブルには砂糖菓子やチーズなど、それはそれは美味しいごちそうが並んでいました。田舎ねずみが大喜びで食べようとすると、とつぜん屋敷の猫が大声で鳴きましたので、2匹は大慌てで物陰に隠れました。

やがて猫の気配が消えたので、再びごちそうを食べようとすると、今度は犬を連れた人間がドタバタと部屋の中へ入ってきました。

またまた大慌てで物陰に隠れた田舎ねずみは、「町には田舎にはない贅沢があるけれど、田舎には町にはない安全があるよ」と言って、田舎へと帰っていきました。

【教訓】 ・幸せや価値観は、人によってそれぞれである。

ライオンとねずみ

ねずみのよめいり豆知識1

昔、ある森のねずみが、誤って昼寝中のライオンの鼻の上を歩いてしまいました。

昼寝を邪魔されたライオンは怒り、ねずみを殺そうとしましたが、ねずみは「どうか命を助けてください。いつか必ず恩返しをしますから」と必死で命乞いをしました。

それを聞いたライオンは、「お前のように小さな者が、おれさまを助けることなどある訳がない」と言いながらも、呆れたように笑ってねずみを助けてあげました。

しかしその数日後、ライオンは人間の猟師が仕掛けた網のワナに掛かってしまいました。

ライオンはどうすることも出来ずうなだれていましたが、そこにねずみが現れて、あっという間に網をかみ切ってくれたのです。

そしてねずみは、「私が恩返しをすると言ったら笑ったけれど、ほらこの通り。ねずみだってライオンを助けることができるんですよ」と言いました。

【教訓】 ・力の強弱に関わらず、得手不得手がある。 ・他人への親切は決して無駄にならない。

日本におけるねずみ

ねずみと人間の係わりは、有史以前に遡るほど古くから存在しています。農耕・狩猟の民族の別を問わず、ねずみは世界中で穀物や保存食を食い荒らす害獣として捉えられてきました。

特に中世ヨーロッパにおいては、ねずみは不吉や不潔の象徴とされ、ペストをはじめとした伝染病をもたらす存在であると考えられていました。実際にペストの媒介者であるねずみは、その繁殖力の強さなどからも恐怖の対象となったのです。

ドイツ民話『ハーメルンの笛吹き』では、ハーメルンの街に大量のねずみが発生したという背景が描かれており、食べ物や家具、仕事道具への被害にとどまらず、子どもや病人がかじられてケガをする姿、食事中に恐れ気もなくテーブルに上がってくる姿など、当時の人々がどれほどねずみに手を焼いていたかがうかがえる場面もあります。

ねずみのよめいり豆知識2

日本も例外ではなく、弥生時代に穀物を保管していた高床式倉庫の「ねずみ返し」などからは、当時の人々のねずみ害に対する工夫が見られますし、平安時代にネコが飼育されたのは、仏典などの貴重文書をねずみから守るためだという説もあります。

また、『源平盛衰記』や『太平記』には、平安時代の高僧である頼豪の怨念が巨大なねずみの妖怪となったことが記されています。この妖怪は石の体と鉄の牙を持っており、比叡山を駆け巡り経典や仏像を食い破ったといい、江戸時代の鳥山石燕の『画図百鬼夜行』において「鉄鼠」と命名されて大妖怪として広く知られるようになりました。

その一方で、日本神話におけるねずみには神性も見られます。
『いなばのしろうさぎ』の物語に登場する優しい神様である大国主が、スサノオに火を放たれた際、その危機を救う役を担ったのはねずみですし、大黒天の神使としても描かれています。

また、昔ばなしの世界でも『はなさかじいさん』、『ねずみのすもう』、『ねことねずみ』など、多くの物語にねずみは登場し、その多くの場合で「良い人間に福財を与える存在」として描かれています。そして20世紀にはイヌやネコと並んで、アニメや漫画など数多くのコンテンツに登場するようになり、人々に深く親しまれるようになりました。

『ねずみのよめいり』では、とても平和な世界、かわいらしい姿のねずみを描きましたが、ねずみと人間の歴史を知った上で、世界各地の物語を改めて見てみると、もっと物語を楽しむことができるかも知れません。

参考文献
イソップ寓話集/アイソーポス著・中務哲郎訳 岩波文庫
日本昔話通観/稲田浩二・小澤俊夫責任編集 同朋社出版
画図百鬼夜行全画集/鳥山石燕 角川文庫ソフィア

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