昔ばなし絵巻

いなばのしろうさぎ

「いなばのしろうさぎ」について

いなばのしろうさぎ豆ちしき1

いなばのしろうさぎは、海を渡るためにウソをついたウサギが、反対に意地悪な神様にウソをつかれて痛い目を見るという物語です。

この話は日本最古の歴史書といわれる『古事記』に登場する説話で、ウサギを助けた優しい神様は大国主命(おおくにぬしのみこと)という日本の国造りを行った神様であるといわれています。いなばのしろうさぎの物語は、どうして大国主命が兄弟神たちに先んじて国を持つことになったのかを説明する「大国主の国造り」という神話の中の一部分なのです。

兄弟神たちは大変な美人である八上比賣(やがみひめ)に求婚するために、大きな袋を大国主に持たせて従者のように引き連れていました。兄弟神たちに欺かれて苦しんでいるウサギと大国主が出会ったのはこの道すがらのことです。大国主に助けられたウサギは、急いで八上比賣のもとへ走り一部始終を報告します。話を聞いた八上比賣は性悪な兄弟神たちからの求婚を断り、心優しい大国主の妻になるのですが、このことから大国主の運命が動き、その国造りへと物語が進んでいくのです。

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保護者のみなさまへ

いなばのしろうさぎには様々な教訓が含まれていますが、日本以外の国々にも同じような展開の物語がたくさんあります。ここではその中のひとつ、コートジボワールの「人とワニ」というお話をご紹。介しますいなばのしろうさぎの物語には「人をだませばやがて自分もだまされて痛い目にあう」という教訓が含まれています。また、たとえ悪い事をしたウサギであっても、苦しみ困っているならば優しく手を差し伸べる大国主の姿からは「罪を憎んで人を憎まず」という精神性も読み取ることができます。さらにこの後に、大国主が八上比賣に夫として選ばれたことまで考えると「人に親切にすれば、巡り巡って自分に恩恵が返ってくる」という『情けは人の為ならず』のことわざにも通ずる教訓を見出すことができます。

どんな人にでもついウソをついてしまうことはありますので、本作品ではその行為を反省する姿をしっかり描きたいと考え、現地の取材を通じて耳にした様々な話や意見も参考に物語を編集いたしました。

いなばのしろうさぎ 豆知識

いなばのしろうさぎの類話

いなばのしろうさぎ豆ちしき1

いなばのしろうさぎには様々な教訓が含まれていますが、日本以外の国々にも同じような展開の物語がたくさんあります。ここではその中のひとつ、コートジボワールの「人とワニ」というお話をご紹介します。

世界の類話

昔、ある人が草原を通りかかると、1匹のワニが野火に囲まれているのを見つけました。普段はとても恐ろしいワニですが、あまりにも必死に助けを求めるので、その姿を哀れに思った人間は、持っていた袋の中にワニを入れて湖まで運んであげることにしました。

やがて火から離れた湖畔まで来たワニは、安心して人間にお礼を言いました。しかし、その時にふと空腹であることを思い出しました。そして、「腹がすいたからお前を食べることに決めた」と旅人に襲い掛かりました。

それに驚いたのは人間です。人間は大慌てでワニにたいして「あなたの命を救ったのだから、感謝して食べないでくれ」と懇願します。そこでワニは近くにいたロバたちに意見を聞くことにしました。しかしロバたちは、「我々は日ごろから人間のために働いているが、感謝などされたことがない」と人間を突き放します。

そして、いよいよワニは人間を食べることに決めましたが、そこに知恵者のウサギが現れて「この袋はとても小さいが、ワニは本当にこの袋に入れるのか?」とワニをそそのかしました。するとワニはまんまと袋の中に入って見せましたので、人間は袋を縛り上げ、村のみんなで食べてやろうと、ウサギを連れて意気揚々と村へと帰っていきました。

しかし村へ帰ると、人間の子どもが病に伏せっていました。医者が言うには、「ワニの血」と「ウサギの肉」があれば薬を作れるそうです。ワニは袋の中にいます。あとはウサギの肉…。その話を外でこっそり聞いていたウサギは、人間が自分の方へ歩いてくるのを見て、慌てて逃げていきました。

いなばのしろうさぎと同じように「ウソをつく」「裏切る」というキーワードが見られる物語ですが、少し性質が異なり哲学的な要素も含まれています。遠い西アフリカのこの小話から、みなさんはどのような感想をお持ちになるでしょうか。

大国主について

いなばのしろうさぎに登場する優しい神様の名前は「大国主(おおくにぬし)」といい、天照大御神に国土を献上したことから「国譲りの神」とも呼ばれています。この国譲りの功績を讃えて創建されたのが出雲大社で、以降は大国主の住まいになったのだと言われています。

いなばのしろうさぎ豆ちしき1

日本書紀と古事記の間で様々な違いはありますが、ヤマタノオロチを退治したことで有名な素戔嗚尊の息子である大国主は、少名毘古那という小さな神様と共に葦原中国の国作りを完成させました。この少名毘古那は一寸法師のモチーフとなっているとも言われています。

また、大国主は多くの別名を持っており、大穴持命(おおあなもち)、大己貴命(おほなむち)、大物主神(おおものぬし)、大國魂大神(おほくにたま)など多岐にわたります。

出雲大社において大国主は「縁結びの神」として知られていますが、それ以外にも農業、商業、医療などの分野でも深く信仰されています。この「縁結び」とは単に男女の仲を結ぶことだけを示すのではなく、全てのものが幸福であるように、お互いの発展のためのつながりが結ばれることを意味しています。

いなばのしろうさぎの物語において優しい神様として登場する大国主は、神話の世界においても私心のない神様として描かれているのです。

参考文献
日本昔話ハンドブック/稲田浩二・稲田和子 三省堂
日本昔話事典/稲田浩二 弘文堂
Il N'y A Pas De Petite Querelle/Amadou Hampate Ba

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