昔ばなし絵巻

つるのおんがえし

「つるのおんがえし」について

つるのおんがえし

つるのおんがえしは、捕えられた鶴を助けた男の家に、人間の女性になった鶴が現れて恩を返すという物語です。日本各地で語り継がれてきた昔ばなしで、その類話は全国で100話し以上にもおよぶといわれています。細部は地域によって様々な違いがありますが、物語の軸となる鶴の報恩という展開は、室町時代の頃に成立した御伽草子『鶴の草子』にも見られる大変古いものです。この物語が架空のお話ではなく、実際にあった伝説として語られている地域や場所がいくつかありますが、その中のひとつに山形県南陽市の「珍蔵寺」があります。本作品はここに伝わる物語を参考に編集をしております。

珍蔵寺は、実際には室町時代の寛正元年(1460)に極堂宗三禅士が創建したと言われていますが、民話の中では登場人物の金蔵が開山したとされています。民話が伝える通り、かつてこの寺には鶴が羽で織ったという布が納められており、大勢の人々が参拝に訪れていたそうです。そのため、最初は金蔵寺と呼ばれていた寺名も、いつしか珍しい宝を所蔵する寺という意味で「珍蔵寺」と呼ばれるようになったと伝えられています。奉納されていた鶴の布は江戸時代の火災で焼失してしまったため、残念ながら今は残っておりません。それでも境内は山門と庭園が調和し、禅寺の雰囲気が色濃く残っているため、四季折々の景観を求めて参詣する人は後を絶つことがありません。

絵本のご購入、及びその他お問い合わせにつきましては、下記お問い合わせからご連絡いただきますようお願いいたします。

保護者のみなさまへ

つるのおんがえしには、「動物をあわれむ優しい心」、「見てはいけないという約束」、「悲しいお別れ」など、日本民話において重要な意味を持つ要素が多く含まれています。特に薪を売って得た大切なお金を、何の役にも立たない鶴に費やしている主人公の姿には、目先の損得勘定よりも己の善悪を重視する豊かな心が見られます。また、大切な人を心配する優しさゆえに約束を破ってしまう主人公や、自分の体を傷つけてまで恩に報おうとする鶴の姿には、強い葛藤や献身性が見られ大きな感動を生み出しています。

この民話の最大の教訓は「約束の大切さ」です。約束の価値というものは自分だけで決められるものではありません。自分には他愛のない約束でも、相手にとっては非常に重要なことがあります。この民話を通じて、お子さまに約束の大切さが伝われば幸いです。

つるのおんがえし

『鶴塚』に伝わる鶴の夫婦愛

国内にはいくつかの伝承地がありますが、滋賀県高島市にある鶴塚が最も良く知られています。鶴の夫婦愛の強さを示すこの伝説は、長い間人々によって愛されてきました。 また、『鴛鴦物語』という類似伝説もあります。こちらの話では鶴ではなく鴛鴦が登場しますが、物語の筋立てはほぼ同じです。ここではこの2つの物語をご紹介いたします。

鶴塚

昔、ひとりの武士が獲物を求めて野を歩いていると、たいへん美しい2羽の鶴を見つけた。武士はさっそく弓を構えると、鶴をめがけて矢を放った。矢は見事に鶴を射落としたので、武士が喜んで近寄ってみると、どうした訳かその雄鶴には首がない。おそらく己の弓が鶴の首ごと射抜いたのだろうと、とても満足した武士は意気揚々と家へと帰って行った。

それから1年が過ぎたある日、武士は再びこの地へ狩りにやって来て、同じように1羽の雌鶴を見つけて射落とした。武士が落命した雌鶴を手に取ると、どうも羽根の中に何かが入っているらしい。さて一体何だろうかと伸ばした手が掴んだのは、何と雄鶴の首の骨であった。

武士はすぐにその雄鶴こそ一年前に自らが射落とした鶴であることを悟り、その骨を羽根の中に持ち続けた雌鶴の情に強く心を打たれた。自らの行いを悔やんだ武士は宝塔を建て、夫婦の鶴たちの霊を慰めたと伝えられている。

鴛鴦物語

昔、ある猟師が阿蘇沼(阿曾沼)の畔を歩いていると、つがいで遊んでいるオシドリを見つけた。猟師が戯れにオシドリを狙って矢を放つと、見事に雄を射止めたので、それに満足した猟師は快い気持ちで家へと帰っていった。

するとその夜、夢に女人が現れて、

「戯れのためだけに命を奪うとは、なんとむごいことをするのか」

と涙ながらに訴えて、

 日暮るれば さそひしものを 阿蘇沼の
 まこもがくれの 一人寝ぞ憂き

という歌を詠んで消えてしまった。

翌朝、猟師が阿蘇沼で射落とした雄のオシドリの骸を見に行ってみると、つがいの雌オシドリが、雄の骸に寄り添うように死んでいたという。

オシドリの情に深く心を打たれた猟師は剃髪して出家し、後に寺を建立してオシドリ夫婦の冥福を祈って過ごしたと伝えられている。

参考文献
日本の伝説/柳田國男著 新潮社
日本昔話通観/稲田浩二・小澤俊夫責任編集 同朋社出版

TOPへ