昔ばなし絵巻

わらしべちょうじゃ

「わらしべちょうじゃ」について

わらしべちょうじゃ

わらしべちょうじゃは、平安時代末期の『今昔物語集』や、鎌倉時代の『宇治拾遺物語』に収められている物語です。「物々交換を繰りかえして持ち物が変化していく」という展開は世界中で人気のあるモチーフで、イギリス民話『ねずみのしっぽ』やインド民話『ねずみ大尽』をはじめ、さまざまな国で類話を見ることができます。また、グリム童話の『しあわせのハンス』のように、価値の低い物と交換していく逆の展開も見られます。

日本のわらしべちょうじゃには、交換する者や目的の違いによって、上記文献に収録された『観音祈願型』と、主に民間で語り継がれてきた『三年味噌型』という二つの種類があります。

前者は観世音菩薩の霊験話としての特色が濃いため、本作では交換の面白さや無欲の人助けの結果としての幸運に焦点をあてた『三年味噌型』をもとに編集いたしました。

絵本のご購入、及びその他お問い合わせにつきましては、下記お問い合わせからご連絡いただきますようお願いいたします。

保護者のみなさまへ

たろうの持ち物が少しずつ高価なものに変化していく過程が、この物語の最大の面白さです。

ワラといえば「溺れる者はワラをも掴む」や「ワラにもすがる」などのことわざに用いられています。これらはどうしようもなく困っている人は、まったく役に立たない物にもすがろうとすることの例えです。このことからも分かるように、昔からワラはつまらない物や価値のない物として捉えられてきました。

そんなワラでも、困っている人を助けるたろうの優しさや、きちんとたろうにお礼をする人々の温かさによって、少しずつ立派な物に変化して、やがて大きな幸せに結びつくという流れこそが、この物語の肝となっています。

優しさと偶然が織りなす物語を、ぜひお子さまとご一緒にお楽しみください。

わらしべちょうじゃ 豆知識

観音祈願型の物語について

わらしべ長者には、絵本で採用した「三年味噌型」の他に「観音祈願型」と呼ばれる物語があります。「三年味噌型」が主に口承文化として受け継がれてきたのに対して、「観音祈願型」は『宇治拾遺物語』などの文献に記載されている物語です。宇治拾遺物語の7巻・第96話「長谷寺参籠男預利生事」がそれに当たります。

昔、すべてに行き詰ってしまったとある侍が奈良の長谷寺へ参詣し、観音様に助けを求めました。

21日間に渡る祈願の後、寺を去ろうとした侍は、寺の大門でつまづいて転んでしまいますが、その時に何とはなしに一本のワラを手に握りました。侍は「これも観音様のお計らいに違いない」と、そのワラを持ちながらあてもなく歩きました。

まもなく、どこからかアブが一匹やってきて、侍の周りをブンブンと飛び回るので、侍はそのアブを捕まえてワラに括り付けました。

そこへ牛車に乗った親子が通りがかりました。侍の持っているアブつきのワラを見た子どもは、ワラをたいそう欲しがりました。そこで侍が若君にワラをあげると、貴婦人はお礼に蜜柑を3つくれました。

すると今度は大勢の家来を引き連れた貴婦人がやって来ました。彼女はとても疲れているようで、しきりに「のどが渇きました」と訴えていますが、辺りには水がありません。そこで侍が貴婦人に蜜柑をあげると、貴婦人はお礼に美しい反物をくれました。

次に、大きな馬を連れた人がやって来ました。それはとても素晴らしい馬でしたが、道端でとつぜん倒れて死んでしまいました。侍はそれも観音様のお計らいだと考えて、持っていた布とその馬の亡骸を交換してもらいます。馬の持ち主は喜んでその場を去りましたが、侍が観音様にお祈りをすると、何と馬が生き返りました。

そして馬を手に入れた侍は、京都の九条のあたりまでやって来ました。すると立派なお屋敷から主人が慌ただしく飛び出してきます。主人は「急に遠国へ旅立たねばならなくなったので、その馬が欲しい」と言い、その代わりにお屋敷とあたりの田んぼを侍にくれました。

こうして侍はたいへんな財産家となり、長谷寺の観音様に感謝をしながらいつまでも幸せに暮らしたそうです。

この侍は、観音様に「助けてくれねばここで死んでしまうぞ」と脅したりしており、昔話の「正直者で働き者だったが不運で」という姿とは大きく異なっています。 交換する品は違いますが、「三年味噌型」も「観音祈願型」も需要と供給による取引をテーマにしており、その偶然と幸運という面白さは、室町時代以降多くの人々に愛されてきたのです。

現代版わらしべちょうじゃ

2005年7月12日、カナダのブリティッシュコロンビア州のカイル・マクドナルドさん(当時26歳)は、インターネットに『赤いペーパークリップ』の画像と「これよりも少しでも価値のあるものと交換してほしい」というメッセージを掲載しました。

このクリップはまず「魚の形のペン」と交換されました。

そしてそれは「ドアノブ」「キャンプストーブ」「発電機」「パーティセット」「スノーモービル」「旅行券」「車」などの交換を重ねていき、1年後の2006年7月12日に「ハリウッド映画の出演権」と交換して「豪華マイホーム」を手に入れました。

当時、この話はさまざまなメディアにも注目され、CBCやCNNをはじめとして世界中の話題となりました。

まさに現代のわらしべ長者。そしていつかはこのお話も昔話として楽しまれることになるでしょう。

カイル・マクドナルドさんのHP
http://oneredpaperclip.blogspot.jp/

参考文献
日本昔話通観/稲田浩二・小澤俊夫責任編集 同朋社出版
日本昔話名彙/柳田国男 日本放送出版協会

TOPへ